初心者の初歩の段階では、練習方法と本格的な試合と分けて実施しています。得物は、小太刀が(60cm)が一番ポピュラーですので、これを使用するのが良いでしょう。
まず練習方法ですが、幼年から成人まで年齢に関係なく小太刀を使い、初めにディフェンスから練習します。
上半身、すなわち頭部や小手、胴等を小太刀を利用して相手の攻撃を防ぐ「四方囲い技」と言う練習方法を指導します。これは、「上囲い」(面打を頭上で正確に受け止める)、「左囲い」(身体の左側頭部、首、胸等を護る。左側肩の辺りで受け止める)、「右胴囲い」(右側胴、腰部を護る。右側の腰の辺りで受け止める)、「下囲い」(蹴技や突技から護る。正面の腰やや下辺りで受け止める)という動作を二人一組で、互いに中段に構えて剣先がふれる距離で行います。
次ぎに下半身のディフェンス、足打ち等を防ぐ方法です。
足さばきには、「引き足」(出ている前足を素早く引き寄せてよける)、「反りよけ」(足は動かさずに、上体を後に大きく反りよける)、「胴引き寄せ」(足は動かさずに、腹部を引いてよける)、「伏せよけ」(小太刀を頭上にかざして頭部を保護しながら伏せよける)、「足あげ」(出ている前足を上げてよける)などの練習方法があります。これも二人一組で互習します。
第34回世界大会 日本代表 野村五月選手(高知県)
この防御がおおむね出来たら次はオフェンスを練習します。
まず打突の方法です。これは基本動作という形式を用いて導入します。
基本動作の流れは、号令に合わせて動作を開始します。「面を打て」以降は、自分でも発声しながら動作を行います。
??「きをつけ」
??「礼」(礼は動作の前後に必ず入ります。)
??「構え刀」では剣を中段構え。
??「面を打て」では、気剣体の一致活動により、1足長前へ踏み出しながら打撃部位は前頭部。慣れてきたら一足長半、更に二足長と踏み込み幅を広くします。 発声は<メン>
??「小手を打て」では、相手の小手の位置を打ち、中段構えに復す。 発声は<コテ>
??「右から胴を打て」では、右から胴の位置を打ち、中段構えに復す。 発声は<ドウ>
??「左から足を打て」では左から体勢を低くして、膝から踵までの間の足の位置を打ち、中段構えに復す。発声は<アシ>
??「突け」では中段の構えのまま、剣先を3〜5センチ程落として水平に剣を前に突き、中段構えに復す。 発声は<ツキ>
??「元の位置」で開始線に戻る。
??「納め刀」で剣を納める。
??「礼」
という動作です。
尚、この基本動作は、大会では全員参加で必ず行われる種目となっています。
これらの説明や動画はホームページに掲載していますので参考にして下さい。
スポーツチャンバラの基本,
三笠宮寛仁殿下と楽しむ 合同運動会 障害者大会 (H19.9.30)
更に、剣を巧みに鋭く操作するために、次の4つの使術を練習します。どのような試合でも、おおむねこの4つの打撃方法で成り立ちます。それぞれに面打ち、小手打ち、胴打ち、足打ちがあります。
??扇打(おうぎうち)
柄を持つ手の五指が上から見えるほど、扇状に剣を開きます。剣先が強く速い打撃となります。
??押打(おさえうち)
手首のスナップを利かせる瞬間、小指・薬指・中指を強く握ることにより、剣先に鋭い加速を加えられる。小指の付根で柄尻を押さえるので「押打」と言います。手の内ではねを利用し速い連打が可能です。
??回打(まわしうち)
手首を柔らかく使って、円を描くように回転させ、上から下に引き回し打つ技で、試合では多く使われます。二重三重の回打も練習しましょう。
??掬打(すくいうち)
回打は縦回しですが、右からの横回しが掬打ちです。
実際の競技ではスピードとタイミングの祭典と言われる程、幾つかの技の組み合わせや工夫が必要となってきます。
以上のような打突練習をした後は、二人一組で実際に競技を体験させます。「スポチャンは、"打ちっこ"ではなく"打たれないっこ"」の基本的な考え方を十分理解させてから始めます。
まずスポチャンは、どこに当たっても一本です。そして当てられた方は必ず挙手をして負けた事を表示します。これを『自心審判』と言い、素直な人格形成に役立ちます。一本が決まったら、その都度開始線に戻して仕切り直させ、段々試合要領を理解してきたら、審判を付けて、「はじめ」の合図で一本勝負を繰り返します。この試合方式の練習で、対人競技の面白さが徐々に湧いてきます。この時の注意事項は、打たれた後、打ち返さない事。これを"後打ちの戒め"と言い、次に上げるスポチャン使術5則の第一番目にもあります。
一,初一本(しょいっぽん)の励行と後打ちの戒め
初一本の励行とは、無駄打ちをせず一本を大事にするということ。そして後打ちをしない潔さを持つという事です。
二、互譲の精神とさわやかな人間の養成
勝ち負けに拘らず、打たれた後は挙手して負けを自ら告知し、勝ちを相手に譲る精神、爽やかさを持つという事です。
三、打ち過ぎの戒めと友愛の精神
ポカポカとむやみに打ち過ぎず、相手を尊重して友愛の気持ちを持つと言うことです。
四、審判の尊重と礼儀作法
審判の判定を尊重し、前後の立ち居振る舞いを爽やかに示そうという事です。
五、基本の反復と工夫の励行
基本を反復練習させるのと同時に、自分自身で工夫をしなさいと言うことです。
基礎をきちんと理解して指導し、安全で公平なスポチャンを楽しんで頂きたいと思います。
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