第３２回世界選手権大会

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　国際会長　田邊哲人

　第３２回世界選手権大会が１１月１２日に横浜文化体育館で開催され、世界２０ヶ国から１３００人のトップアスリートが集まりました。
種目は８つ、個人戦は段級別。団体戦は、各国代表３名が１チームで打突競技部門と基本動作部門の２種目です。横浜文化体育館の２０コートの試合場が世界の熱気で包まれました。世界はやっぱり強い！！

　開会式で私が挨拶したように、戦国時代のサムライスポーツの象徴であるスポーツチャンバラも、やがては世界の騎士道に圧倒される日が来るであろうことが予想はできました。正にそれが証明され現実となり、その結果は皆が目の当たりにした通りでした。
個人戦打突部門チャンピオン（これが世界チャンピオン）は、ヨーロッパチャンピオンでもあるフランスのAlain Girot選手、団体戦基本動作部門も大接戦の末、ロシア代表チームが日本代表チーム（野村五月選手、川田多美子選手、田渕美也子選手）を破り団体優勝に輝きました。
日本選手の活躍は、個人戦基本動作部門では吉村美穂選手（千葉県）が、細川健一選手（東京都）を決勝で破り優勝、団体戦打突部門では歴代の世界チャンピオンで結成された日本最強のチーム（小太刀 - 田邊賢一選手（第１，２，５，１０代チャンピオン）、長剣 - 多田悟選手（第１４代チャンピオン）、二刀 - 細川健一選手（第７代チャンピオン））がこの部門では圧倒しました。これが唯一、日本人の救いでした。

　総体的にも日本選手は外国選手に押され気味で、サムライ日本とは名ばかりとなってしまいました。昨今ややもすると、行き先を見失っている日本の甘さと弱さが露呈されたような結果です。民族の戦いと民族のプライドを賭けた安全・公平・自由の戦いの場であるこのスポーツチャンバラの世界に、世界の人々は非常に共感を持ち、スポーツチャンバラを認め、ヨーロッパから、あるいはアフリカから、何十時間も掛けて自費で遠征して来ます。そのことを考えると、私は心から敬意を表すると共に、日本人はサムライスピリッツを目覚めさせ、もっともっと自覚と気迫をもって向かって欲しい。

　今回個人戦打突部門で優勝したAlain Girot選手は、１５年ほど前に私と細川健一君と二人で初めてフランスから招待されパリ大学へスポチャンの講習会へ指導に行った際、まだ小学低学年でした。それからスポチャン少年となり、今や日本勢を押さえ世界チャンピオンになったと言うことは、幼き頃を知っている私には感慨深いものがあります。

　日本選手にとってはこれを機に零年スタート。足元を今一度見直さなければならない時でしょう。地方の選手もこのような大きな大会に積極的に参加し、一時でもそれらと剣を交え、またその空気を吸うことが大事でしょう。そして海外選手の強さを肌で感じ、自分の目で見、強い衝撃と感動を得ることがスポチャンの大きな魅力です。チャンスがあれば誰とでも戦えることができ、だれとでも友達になることができるというプレゼンテーションの場を、私は万人に分け隔て無く与えています。世界は広い。そして世界は大きい。この際、自分の甘えや弱さを克服し、強い精神力を持ち、やがては日本の星、いや、世界の星となることを心の底から期待しています。