スポーツチャンバラ 田邊哲人会長のインタビュー
会長インタビュー No.44
「本部講習会(直伝会)ついて」

田邊哲人会長
東京での本部講習会(直伝会)は、興味深い勉強会でした。


  2月5日に東京都で開催した本部主催講習会では、本物の槍、袖搦(そでがらみ)、刺又(さすまた)江戸時代の棒を使っての勉強会で、それらを持ったり構えたりして体感しました。
  日頃はエアーソフトが使い慣れているので、槍や刀となるとなかなか勝手が違うのか、思うように使い切れない、操作ができないようです。特に真剣での畳表を丸めたものを斬るのに、思いの外、勝手が違ったようです。
  これもスポチャンをやる上では、一度は経験した方がいいでしょう。また棒は手のひらでくるくる回せる程ヤワなものではありません。6尺の樫の棒ですから両手で振りますのが精一杯でしょう。

2012年2月5日本部講習会集合写真



面白い講習会ですね!なかなか体験できない事です。
本物の刀は重いと聞きますが、如何なのでしょうか?

  刀も含めて全ての武器は、重く作れば重くなるし、軽く作れば軽くなる。長く作れば長いと言うわけで、全てが同じではないのですよ。本人の体格や好みに合わせて作るものですから。

  時代劇などでも出てくる袖搦(そでがらみ)、刺又(さすまた)などの現物を見ると、思いのほか武器の形態をしていて、捕まえる為だけではなく、戦う武器であることが判ります。先に一寸(いっすん)位の鋭い釘がバラの棘のようにたくさん付いていて、とても素手で掴んだり、刀で切ったりと言うような使術が可能なものではないのが判ります。非力な女性でもそれらを持って構えただけで、殆どの男性が抵抗できないと思います。袖袖搦(そでがらみ)とは名のみで、実際はかなり強固な武器です。使い方によっては、槍よりも利があるかもしれません。

2012年2月5日槍vs刀 いざ勝負!

実際の槍と刀ではどちらが強いのですか?

  実践で槍と日本刀のどちらが有利かと言えば、槍の方が間合いで有利です。

今の剣道ばかりを見ている人は、刀の方が使い勝手が良く素早いと思うかもしれませんが、実際は、槍の達人が使う槍とその間合いはなかなか詰りません。刀が間合いを詰めようとする時、そのスキを槍に突かれるという事になります。即ち、槍は「最短距離を直線的に」という1拍子の動作なので、力のない女性にも簡単に扱えます。他方、刀は、「振り上げて、打つ」という2拍子ですので、素人にはどうしてもタイミングを計るのが難しい。槍の場合は、穂先が短いもの、また、大身槍(おおみやり)・十文字槍など様々あり、大身槍などは、穂先の長いものは2尺(60cm)以上あるものもあります。(黒田節で有名な名槍「日本号」 (外部リンク 福岡市博物館HP)は天下三名槍の一つと言われ、穂先は二尺六寸一分五厘(79.2センチ))。従って片手で投げ突きなどの様な安易な使術はなかなか出来ないでしょう。一度、的(まと)を外れると二の槍を繰り出すのに手間が掛かり、それは「穂先が地面を引きずるような事」になるからです。(先が重いので)」  
  このように投げ突きが外れた場合、自分の方が返って無防備になります。まぁガラ空き状態ということですね。槍は懐に飛び込まれるような接近戦には不向きです。その点、袖搦(そでがらみ)は、釘が先から1m位まで付けてあるものは、接近戦でも大丈夫でしょう。横に振れば、鋭い釘がそれなりの武器になりますから。

  自分の知らないことを知るというのは、楽しいことです。

  昔は本部道場に本物の具足(ぐそく)(鎧)が置いてありました。鎧とは室町時代以前のもので、戦国時代以降のものは具足と言います。その鉄の具足を門人に着けさせてみると、その重さに先ず皆が驚きます。本物は、今のお祭りなどで着るような軽いダンボールやプラスチックではなく、鉄製である為に大変重いですね。20kg以上ありますよ。道場ではそれらを身に付け戦わせていました。剣道の防具より重くて、袖や垂れがガチャガチャと大変うるさくてたまらない。兜に面包(めんぽう)を着け、上から木刀で叩くと、大方の者は倒れて起きあがれません。具足の重みで容易に起き上がることが出来ないのです。初期の門人にはこういう経験をさせたことがありましたが、ほとんどの者が、「こんなものは二度と着けたくない」と言いますね。ましてや、真夏など裸でも汗がにじみ出るのに、こんなものを着けて炎天下で戦う武将なんて、ほとんどあり得ないと思っています。熱中症になってしまいます。又、これを着たまま馬に乗ったら、馬も大変でしょうね。トイレも困るし。

  私の家には多いときは8両ほど様々な形の本物の鎧が置いてありました。世界大会の折りには、アメリカやオーストラリアの合宿所になっていましたので、加藤清正風の鉄の長高烏帽子(ながえぼうし)形兜(外部リンク 徳川美術館)があり、彼らは興味がありそうでしたので交代で被り、「Oh, too much heavy!」と言って、首がグラグラしていました。
これらは、大方が飾り鎧と言い、床の間飾りで代々家にあったものでしょうね。
兎に角、動きが悪すぎます。こんなものを身に付けて野山を駆け回るなんて、あり得ないと思います。 具足蒐集の初期の頃、、鉄の代わりに鞣した馬の皮を使った具足を購入した事がありますが、それは軽くて便利なものでした。やはりいつの世も身軽なのが一番良いですね。

  その点、スポチャンはいいです。面さえあれば後はそのままの姿で戦えます。このように、本物の武器や具足を体験し、実際に扱ってみる事により、テレビや小説を見抜く目も養われますね。「スポチャン」と言うと何となく軽い名称ですが、これら実践に鑑みて作ったスポーツ武術ですから、理解すれば楽しいでしょう。


有り難うございました。
次回の「インタビュー」もお楽しみに!!

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