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2018. 08. 21
「美術の窓」田邊会長の連載 第11回
「美術の窓」vol.420 2018年9月号 P64〜P65

矛と盾

連載 第11回 輪廻
 
 土壁を想わせる絵肌の画面にデフォルメされて描かれた幾つもの向日葵。花弁を表象するのは、奥からじんわりと滲み出るような光の円だ。それはさながら光輪のような様相で、穏やかな崇高性を帯びる。聖人が並んだ群像表現のような趣をも感じさせているのが興味深い。
 灼熱の季節、太陽の如く燦々とした煌めきを湛えて咲いた花も、秋の訪れを前に儚く枯れゆく。画面の上方に消え入りそうで朧気な向日葵の姿を点在させるコンポジションが、燃え尽きた命が天に昇っていくようなイメージを呼び起こす。枯れた向日葵は、種という名の次なる命の小さな灯火を現世に残して、去って行く。彼岸と此岸、あの世とこの世、巡る命。向日葵を媒介に、画家は輪廻の世界を描き出した。もうすぐ、夏が終わる。残された火種も一年後には、赫々たる輝きを放ちながら、また新たな命を燃やし始めるのである。

関連サイト:
田邊哲人 作品集