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2018. 04. 23
「美術の窓」田邊会長の連載 第7回
「美術の窓」vol.416 2018年5月号 P102〜P103

矛と盾

連載 第7回 生
 
 業火と見紛う(みまがう)ほどに咲き誇る彼岸花に思わず圧倒される。円弧を幾度となく引き重ねて表される、反り返る花弁の特徴的なかたち。力強いストロークの連続が、群生する花の姿を画面に表出させている。彼岸花は曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ばれる。それは仏教において、見る者の悪業を払い、天人が雨のように降らすという瑞兆をも現す花の名である。田邊が描き出した彼岸花はまさにそうしたこの世のものならざるような存在感がある。その鮮紅色は妖力を宿したような独特なオーラを放ち、惹きつけてやまない。真っ直ぐに伸びた茎、凄烈に花を開く彼岸花。一年に一週間だけその花を咲かす、刹那的にして壮絶な命の美しさ。日本では「死」を連想させる不吉な花として敬遠さがちであるが、田邊によって描かれた光景は確かな瑞兆を思わせて、「生」のイメージを強く喚起する。

関連サイト:
田邊哲人 作品集